すてきな三にんぐみ トミー・アンゲラー:作 いまえよしとも:訳

青と黒の表紙が印象的、一度見たら忘れられない絵本です。

ただ目的もなく盗みを繰り返していた三人組が
行くところのない女の子と出会ってから

親と生活できない子どもたちのためにお城を買って住まわせて
安心して一緒に暮らせる場所をつくっていくというお話です。

物語自体は淡々と進んでいきます。
主人公の三人組は登場してからずっと
どこかユーモラスな雰囲気を醸し出しています。

女の子と出会うまでは、
絵本の基調色は青と黒です。
人から金品を盗んだり、物を壊したりすることが
毎日のルーティーン、繰り返される日々、
あまり暖かみの感じられない、無機質な時間を
彼らが過ごしていたのではないかと思ってしまいます。

ティファニーちゃんと出会ってからのページからは
終わりまで、おっ!と引き込まれる暖色が目立ってきます。

三人組の貯め込んだ財宝を見た彼女の
「これどうするの?」という言葉に
面食らった彼らの表情はなんともいえないかわいさです。

お話の終わりには、
育てられた子どもたちはそれぞれ家庭を持ち、
三人組に感謝を込めて
三つの塔を建てて生きていきます。

この物語に初めて出会ったのは保育園に通っていたころ。
当時は三人組のお城の前に、子どもが置かれているという描写に
強い衝撃を受けました。なぜそのような事態が起こるのか、
幼少時は疑問符ばかりでした。
育てられた子どもたちはみんな大人になって
幸せに生きているという結末にホッとしましたが、
それでもお話の底に悲しみを感じてしまい、
読み聞かせのとき、辛かったです。

今、子どもを育てる環境にあり、
状況を彼らと共有する段階にいます。
考えたことは以下の3点です。

①人は変わる
彼らのしていたことは間違いなく悪事です。
ですが、話の中の他の大人たちはおそらく積極的にしなかったことであろう
子どもたちの保護や生活を共にすることを淡々と進めて実行しています。
最初は目的もなく日々を過ごしていたのに
目的が明確になった彼らの行動には目を見張ります。
かくありたいものです。

②他者のために湧き出るパワーもある
おそらく自分は独身のままでいたら、
物凄く自堕落で非生産的な生活をずっと続けていたのではないかと思います。
それ自体に善悪はないのですが、
他が自身の視野に入ることで生まれる変化もあるなと思った次第です。
自分だけのために食事を作る気力は出ない、というやつです。

③物事に対するジャッジは好ましい展開に結びつかないことがある
成長した子どもたちが
三人組のかつてしていたことに色々思うことはあったかもしれません。
彼らの行いで生かされた子どもたちも間違いなくいたはずです。
そこについては描写がないのですが、
今現在・これからの未来に焦点を当てた終わり方だったなと感じました。

英語の原題では”The Three Robbers”とそのままですが、
すてきな…というタイトルなのは
子どもたちにとってのすてきな存在、
子どもを育てる人にとってのすてきなお手本、
という含みなのかな、と考えました。

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